2014-09-24
黄昏の光と影

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『黄昏の光と影』
柴田哲孝 著
光文社

社会派サスペンスや自然科学ミステリーを得意分野とする著者が、今回テーマとして選んだのは「孤独死」だ。
東京のとあるアパートで孤独死した老人の部屋に、女性の白骨死体が隠されていた。捜査を進める過程で意外な記録が浮上。孤独死した老人は書類上、50年以上前に伊勢湾台風で死亡していたことになっている。
孤独死した老人と、白骨死体の女は何者なのか。
所轄のベテラン刑事と新人刑事のコンビは西日本へ飛ぶ。
名前のない男と女の過去を追って飛び回る刑事たちは、やがて事件の発端となった土地を突き止める。
戦争、震災、台風――歴史の節目で犠牲となった〈忘れられた村〉があった。そこで起きた悲しい事件とは……。
著者の作品にしては、やや地味だ。リアルタイムの大災害はおきないし、未知の生物も跋扈しないし、国際的な謀略もからまない。なのにページをめくる手が止まらない。
奇抜なトリックもないし、天才探偵も登場しないけれど、「いいミステリー」に仕上がっている。
ベテランと新人という刑事のコンビもベタだが、余計なキャラ付けをしていないぶん描写がいい具合に自然で好感が湧く。
地味な物語を、それでも「読ませる!」のは、作者の「力」なのだろう。
本書によれば、年間1500人の老人が孤独死し、そのうち1000人が身元不明だそうだ。
ひと括りにしてもおびただしい数だが、その一人ひとりに、刑事が靴底をすり減らしても追い切れない人生があるのだろう。そんなことを考えた。
他人事ではない。自分も高確率で、孤独死すると思う。
オススメ度 ★★★★
靴すり減り度 ★★★★★
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